薬学部は大変って先輩に聞いたけど、どのくらい忙しいのかしら?
進級は難しいのかな?
薬学部は6年生で国家試験を受けるため、学ぶことが多く大変だとよく言われます。
入学したての頃は、先輩から色々な話を聞かされ、不安に思っている方も多いでしょう。
私立薬学部を卒業し現在は薬剤師をしている僕が、実際どうなのかを解説していきます!
今回の記事では各学年の大変さをランク分けし、進級ができずに困っているときの対策もお伝えします。
- 薬学部はどのくらい大変なのか?
- 特にきつい学年は何年生か?
- 進級が難しく、困っているときの対処法
薬学部は勉強が大変?
薬剤師は人の命に関わる仕事。
その勉強をする薬学部は、やはり大変なのでしょうか?
結論からいうと、とても大変です。
もちろん連休や長期休暇など、遊べるタイミングもありますが、基本的には忙しい場所だと思ってください。
また勉強すべきことも多く、テストもたくさんあるので留年する人が多数います。
▼私立大学薬学部の卒業率
大学名 | 卒業率(%) |
---|---|
慶應義塾大学 | 88.7 |
東京理科大学 | 83.3 |
日本大学 | 72.4 |
立命館大学 | 67.3 |
横浜薬科大学 | 44.2 |
第一薬科大学 | 22.6 |
参考:文部科学省HP「薬学部における修学状況等 2021年(令和3年)度調査結果」
有名大学でも10~20%の人が留年します。
留年率が高いところでは、入学者の半分以上が6年で卒業できていません。
4年制大学で一度も留年せずに卒業する割合は81.6%なので、一部の大学を除きほとんどの私立薬学部は、平均より卒業率が低いです。
薬学部が大変な理由
なぜ薬学部は他の学部と比べて、留年しやすいのでしょうか?
具体的には、次の3つのことが原因です。
- 必修科目が多いから
- 勉強内容が難しいから
- 実験が多いから
一つずつ解説していきます。
必修科目が多いから
薬学部は他学部と比べて、必修科目がとても多いです。
これは必ず取得しなければならない科目で、一つでも不合格だと卒業できません。
そのため薬学部は取らなければならない単位が多く、勉強量が膨大です。
必修が多いので、どの学年も朝から晩まで講義がびっしりあります。
でも、1~3年である程度単位を取れば、後半の学年は楽になるんじゃない?
残念ながら、薬学部は全学年で必修科目があります。
他学部のように「単位を取り終えたから、もう大学に行かなくてOK」といったことはありません。
というかほぼ全ての科目が必修です。
また薬学部は「出席するだけで単位がもらえる」という科目はほとんど無く、期末試験を課す科目が多いです。
あまりにもテストが多すぎて、単位を取りきれない人がたくさんいます。
クリアしてもクリアしても終わらないテスト地獄…
それが薬学部です。
勉強内容が難しいから
はっきり言うと、薬学部の勉強内容は難しいです。
薬学だけでなく、化学や生物学も勉強します。
- 薬理学
- 薬剤学
- 生薬学
- 薬物動態額
- 薬物治療学
- 薬事法規・薬事制度
- 生化学
- 有機化学
- 物理化学
- 分析化学
- 衛生化学
- 天然物化学
- 解剖学
- 免疫学
- 微生物学
- 分子生物学
ざっと挙げただけでも、こんなにあります。
薬理学では薬の作用の仕方や副作用を理解しなければならないので、高い理解力が必要です。
また化学系の科目では、多くの化学反応や生体内の仕組みを勉強するため、こちらも高度な内容を学習します。
学年が上がるたびに、内容はどんどん専門的になります。
これらに必死で食らいつきながら6年間を過ごすのは、とても負担が大きいと言えるでしょう。
実験が多いから
薬学部が大変な理由は、テストだけではありません。
実験が多いことも、学生の負担を増加させる一因です。
薬学部では主に化学物質の反応実験や、マウスの解剖などを行います。
楽しく実験して終わり…ならよいのですが、実験を終えたらレポートを書かなければなりません。
実験が多い時期は、ほぼ毎週レポートを書いていました。
場合によっては、期末試験の直前まで実験を行うこともあります。
そのときは試験勉強とレポートでめちゃくちゃ忙しかったです。
各学年のきつさ
薬学部の大変さは、各学年によって違います。
上の学年の方が難しいように思えますが、実はそれほど忙しくない期間もあります。
どの学年が大変なのかをあらかじめ知っておけば、気持ちにメリハリをつけられるため、ここぞという時に頑張れるでしょう。
下記に各学年の難易度をまとめました。
▼各学年の難易度
学年 | 難易度 |
---|---|
1年次 | |
2年次 | |
3年次 | |
4年次 | |
5年次 | |
6年次 |
学年ごとに詳しく解説していきます。
1年次
難易度 |
1年次は専門科目が少なく、テストの難易度も低めです。
化学や生物など高校の延長に近いことを学びます。
実験やレポートも少ないので、そこまで忙しくはないでしょう。
しかし油断は禁物です。
高学年と比べて難易度はやさしめですが、決して楽に単位が取れるわけではありません。
当然、期末試験の勉強は必要です。
気を抜くと普通に留年します。
僕の大学には1年の前期で留年が確定した人もいました。
2年次
難易度 |
2年次は専門科目が増え、難易度がグッと上がります。
有機化学、生化学、免疫学、解剖学といった難しい科目を勉強するため、ついていけずに苦しむ人が多いです。
テストの難易度も高く、簡単には合格できません。
さらに2年次から実験とレポートも増えるため、前年よりも格段に忙しくなります。
これらの理由から留年者が続出する学年です。
僕の大学では、2年次になんと学年の1割近くの人が留年してしまいました…
勉強についていけずに、大学を辞めてしまった人もいるくらいです。
3年次
難易度 |
3年次は薬学部前半の山場です。
2年次と同じく専門科目のオンパレードですが、その難易度はさらに上がっています。
膨大な暗記量の薬理学や、数学のような計算問題の出る薬物動態学など、さまざまな科目に対処しなければなりません。
実験やレポートも2年次と同じくらい多いです。
とにかく忙しく、単位を落とす人は当然のように留年します。
アルバイトや遊びはほどほどに抑え、勉強する時間をしっかり確保すべきです。
4年次
難易度 |
4年次はテストが少なく、比較的楽な学年です。
実験もいったん終了してレポートもほとんどないため、2年次や3年次と比べると忙しさは半減しているでしょう。
学年の最後にはCBTとOSCEがありますが、どちらも簡単です。
なおCBT、OSCEについては下記を参考にしてください。
CBT(Computer-Based Testing)は、薬学生が実務実習を行うために必要な知識、態度が、一定の基準に達しているかをコンピューターを使って客観的に評価することが目的です。各大学は、定められた期間内で、大学ごとのスケジュールに合わせて試験日を設定します。また、各受験生は、PCの画面に提示された問題に解答します。
薬学共用試験センターHP「CBTの概要」
OSCE(Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)は、薬学生が実務実習を開始する前に技能及び態度が一定の基準に到達しているかを客観的に評価するための試験であり、表に示した5つの領域についての実地試験または模擬患者が参画するシミュレーションテストが含まれます。
薬学共用試験センターHP「OSCEの概要」
要するに5年次で行く実務実習の準備テストです。
テストと聞くと不安になりますが、大学の期末試験と比べると非常に簡単です。
どちらも合格率は97~99%もあります。
4年次まで進級できる学力があれば、まず落ちることはありません。
4年次はそれまでの学年と比べると、ゆっくり羽を伸ばせる時期です。
ただし大学によっては、CBT・OSCE前に独自のテストを課す場合もあるので気をつけましょう。
5年次
難易度 |
5年次は最も楽な学年です。
自由に使える時間も多く、一番大学生らしい生活ができる期間でしょう。
5年次が忙しくない理由は、テストがほとんど無いからです。
必要な単位は前学年までにほぼ取り終えているため、座学や期末試験を受ける必要はありません。
では5年次は何をするのでしょうか?
それは実務実習と卒業研究です。
実務実習は病院と薬局に約2か月半ずつ、合計5か月行きます。
実習中にテストなどは無く、基本的に出席してやるべきことをやれば単位がもらえます。
よほど厳しい所でなければ、レポートもすぐに書き終えられる量です。
そのため実習が終わった後は、遊びやバイトに専念できるでしょう。
実習の無い期間は研究室にて卒業研究を行います。
毎日研究室に通うことになりますが、まだ卒論発表まで時間があり、根詰めて実験を行う必要はありません。
ゆるい研究室だとフレックスタイム制を取り入れており、10時登校16時帰宅なんてこともザラです。
この期間も比較的自由に過ごせるでしょう。
ただしブラック研究室に入ってしまった場合は、一気にハードモードになります。
事前に情報を得て、ブラック研究室は絶対に避けるようにしましょう。
6年次
難易度 |
あなたの想像通り、6年次は最も大変です。
卒業研究に卒業試験、そして国家試験とやることはたくさんあります。
はっきり言って、大学受験の時より忙しいと思ってください。
6年次の前半は卒業研究を行い、卒論発表を行います。
卒論発表のタイミングは大学にもよりますが、早いと4~5月頃、遅いと秋頃に実施するところもあります。
もしあなたの大学が遅くまで卒業研究をやらせる場合は、国家試験の勉強も並行して行うようにしましょう。
後半はいよいよ卒業試験、国家試験の勉強です。
薬学部では基本的に秋~冬にかけて卒業試験があります。
これは学生がしっかりと勉強し、国家試験に合格できる学力をもっているかどうかを審査するための試験です。
点数が足りない人は容赦なく落とされ、卒業延期にされます。
どの大学でも、毎年必ず数人~数十人程度は卒業できません。
詳しくは下記を参考にしてください。
文部科学省HP 薬学部における修学状況等 2021年(令和3年)度調査結果
あなたの大学の卒業率も見ておくのがオススメです。
卒業試験に合格したら、最後に国家試験を受けます。
薬学部6年間のラスボスともいえる存在でしょう。
令和4年に実施した第107回薬剤師国家試験の新卒合格率は85.24%です。
※新卒とは、大学を卒業してから初めて国家試験を受ける人のことを指します。
参考:厚生労働省HP 薬剤師国家試験のページ 第107回薬剤師国家試験の結果について
新卒の合格率は大体80~85%で高いものの、年度によっては70%ほどのときもあります。
油断すると普通に落ちるので気をつけましょう。
これらの関門があるため6年次は勉強や研究で忙しく、遊びやアルバイトの時間はあまりとれません。
ですが無事国試が終われば、入社までの1か月程度は遊んだり旅行に行ったりできます。
それまではしっかりと勉強に集中しましょう。
色々と脅してしまいましたが、辛い期間を乗り切る方法はあります!
次の見出しで紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
薬学部できつい学年を乗り切る方法
薬学部できつい学年を乗り切るには、いくつかのコツがあります。
今から紹介するポイントを意識して行動すれば、必ずあなたの役に立ってくれるでしょう。
結論からいうと次の5つです。
- 過去問をいち早く手に入れる
- 再試験を上手く活用する
- 分からないところは参考書で解決
- テスト前はバイトを少なめにする
- 一人にならない
一つずつ解説します。
過去問をいち早く手に入れる
まず何よりも重要なのが、過去問をいち早く手に入れることです。
「過去問を使って勉強したって身につかない!」
そんな風に考えていた時期もありました…
しかし過去問を集めて情報を得ている人はしっかり単位を取れていましたが、そうでない人は落としている人が多かったです。
過去問を使うと次のメリットがあります。
- 各科目の難易度が分かる
- 勉強すべきポイントを明確にできる
- 各教授のよく出す問題や、テストのクセが分かる
これらを知っているかどうかは、非常に大きいです。
期末試験が近づいてからではなく、なるべく早く全ての科目の過去問を集めるようにしましょう。
またその際に先輩がまとめた要点ノートなども入手しておくと良いです。
これらを手に入れておけば、試験勉強の大きな味方になってくれるでしょう。
一方で注意点もあります。
それは過去問の答えを暗記するだけでは、試験に合格できないことです。
過去問はあくまで過去問、そこに載っている問題だけ解けても、別の問題を出されたら太刀打ちできません。
答えだけ覚えるのではなく、ポイントをおさえて網羅的に勉強しましょう。
再試験を上手く活用する
薬学部で期末試験の勉強をするときは、全ての科目をまんべんなくやってはいけません。
色々な科目に手を出し過ぎると、結局どれも中途半端で共倒れになる可能性が高いからです。
薬学部の期末試験には、本試験と再試験の2つがあります。
まず全員が本試験を受け、そこで合格点に満たなかった科目だけを再試験としてもう一度受けます。
この再試験を上手く活用することが、きつい学年を乗り切るコツです。
薬学部の期末試験は15~20近い科目があり、これらを全て1回で合格することは簡単ではありません。
そこで本試験では簡単な科目を確実に合格し、難しい科目は再試験で拾うという戦略がおすすめです!
例えば簡単な科目と難しい科目が5つずつあるとします。
まずは簡単な科目から集中して勉強し、これらを全て本試験で合格します。
このとき難しい科目も1~2つほど合格しておくとより良いでしょう。
そうすれば再試験では残り3~4つの難しい科目に集中できるため、これらを確実に拾っていくことができます。
まずは「この科目は簡単に合格できる」「あの教授のテストは難しい」といった情報を集めましょう。
各科目の難易度が分かったら、どれを本試験で合格し、どれを再試験にまわすのかを決めてください。
無理に本試験だけで全て合格しようとせず、2回の試験を上手く利用することであなたの負担は大分軽くなるはずです。
僕の大学でもいわゆる「要領が良い人」は、このように戦略を立てることで上手に試験を突破していました。
分からないところは参考書で解決
薬学部の勉強内容はとてもハイレベルです。
試験の勉強をしていると、分からないところが何度も出てきます。
教科書や講義中にまとめたノートを見ても分からないときは、参考書を利用するのがおすすめです。
薬学に関する参考書はいくつかありますが、僕は青本を利用していました。
本来は国家試験の対策に使うものですが、内容が非常に分かりやすく理解を深めるのに役立ちます。
重要な箇所は太字になっており、図表も載っているのでとても見やすいです。
価格は少し高めですが、先輩から要らなくなったものを貰ったり、フリマアプリなどで中古品を購入すれば安く手に入ります。
一冊手元に持っていて損はないでしょう。
さっそくメルカリで探してみよっ♪
テスト前はバイトを少なめにする
バイトのしすぎで留年してしまう人は一定数います。
特にテスト前の忙しい時期にシフトを入れすぎると、勉強時間が確保できずに単位を落とすことが多いです。
薬学部のテストは膨大な量を覚えなければならないため、一夜漬けでは突破できません。
そのため最低でも1か月程度はまとまった時間を作り、コツコツと勉強する必要があります。
テスト前はバイトを少なめにして時間を確保しましょう。
派遣バイトは単発や短期のものが多く、自分の好きなタイミングで働けるので薬学生におすすめです。
例えば長期休暇中などの時間に余裕があるときはたくさんバイトをして、テスト前は一切シフトを入れないといったこともできます。
忙しい時期に合わせて融通が利くので、ぜひこれを活用しましょう。
一人にならない
最後にもう一つ大事なことが一人にならないことです。
薬学部を留年せずに乗り越えられるかどうかは、どれだけ情報を持っているかどうかにかかっています。
そしてその情報をあなたに与えてくれるのは、周囲の友達や先輩です。
近くにいる人を大切にし、普段からしっかりコミュニケーションを取りましょう。
何もプライベートで密な関係を築く必要はありません。
大学で一緒に講義を受けたり、昼休みにご飯を食べに行くだけで大丈夫です。
良好な関係を作っておけば、いざという時に過去問やテストの情報を交換し合えます。
逆に一人きりになって情報からシャットアウトされてしまうと、あなたの大学生活は一気にハードモードになってしまいます。
留年する人はテスト前の時期に大学に全く顔を出さず、他の人と過去問や情報を交換していませんでした。
一人で勉強に集中することはもちろん大事ですが、定期的に友達と会ってお互いに情報共有するのも大切です。
ぜひ積極的に他の人と交流しましょう。
まとめ
薬学部できつい学年を乗り切るコツは次の5つです。
- 過去問をいち早く手に入れる
- 再試験を上手く活用する
- 分からないところは参考書で解決
- テスト前はバイトを少なめにする
- 一人にならない
薬学部では大変な時期もありますが、夏休みや春休みなどたくさん遊べるタイミングもあります。
どの学年が忙しいのかを事前に知っておけば、力の入れどころが分かるはずです。
勉強に集中するとき、目一杯遊ぶときでメリハリをつけて、大学生活を充実させましょう!
最後まで読んで頂きありがとうございました。
少しでも参考になれば嬉しいです。